『科学の教室』と『人文科学の教室』のコラボ企画
  “大阪大学いちょう祭を探検! 〜大学、研究の世界に触れる!〜”
 2018年4月30日(月) /大阪大学(吹田・豊中キャンパス)と国立民族学博物館
 

 今年度の第1回『科学の教室』は大阪大学いちょう祭の見学。1年生25名、2年生28名、3年生2名の計55名の生徒を乗せ、峰山を7時に出発したバスは9時半頃に万博記念公園に到着。今回は『人文科学の教室』とのコラボ企画ということで、午前中は国立民族学博物館と吹田キャンパスに分かれて見学。午後は全員で文系と理系の両方の学部がある豊中キャンパスを見学しました。それでは午前中の国立民族学博物館と吹田キャンパス、午後の豊中キャンパスの見学の様子と生徒の感想を紹介します。

 
 

「国立民族学博物館」 (午前中/人文科学の教室/23名参加)

 国立民族学博物館(みんぱく)は万博公園内にある文化人類学・民族学の研究所です。世界の諸文化への理解を深めるために、世界各地の人々が普段の暮らしで使っている衣食住などの生活用品を中心に資料が収集され、その一部である1万2千点の資料が本館展示場で公開されています。展示場ではオセアニアから始まって、アメリカ、ヨーロッパ、西アジア、音楽、言語、南アジア、東南アジア、中央・北アジア、東アジア、そして最後に日本と、地球を東回りに一周しながら世界の人々の生活や文化を知ることができます。

 
 民族学博物館(民博)の入口で集合写真。昨年度の『人文科学の教室』に参加した2年生の生徒が多く参加しました。    民博のエントランスホール。館内展示や展示物を保護するための見学の際の注意事項などの説明を聞きました。
     
 
 展示物の多くはそのまま展示されていて、手が届く範囲であれば手で触れて質感を確かめることもできます。    世界各国の「はらぺこあおむし」の絵本の展示。絵本をセットするとその国の言葉で絵本を読んでくれます。
     
  <参加者の感想>
 私が国立民族学博物館で良かったなと感じた事は、何を使ってこの絵は描かれたのかという事や、祖先像や仮面などは国によって全く違うというわけではなく、どこか似ているなと感じるなど、疑問を持ちながら見学できたことです。またリオのカーニバルはキリスト教の行事の一つだということに驚きました。そして展示物に触れられるものも多かったのでより興味を持つことができました。年・女子)
 世界各国の生活用品や衣服、伝統などたくさん見れて楽しかった。日本と似ている用品や衣服もあったし、日本ではあまりない仮面をつけてお祝いする国もたくさんあり、その国独特の仮面や音楽だったりして、その国の伝統文化も知ることができて良かったです。とくに衝撃を受けたのはアフリカのゾーンで、奴隷を繋いでいた鎖や武器を利用して作った物が展示されていて、こんな物を人々がつけさせられ持たされていたことが怖いなと思いました。年・女子)
 それぞれの世界の歴史一つ一つを見ることができたので良かった。衣装や発展したものが違う所が面白いなと思った。今あるものが昔から引き継いだもので、形が似ていたりして今に繋がっているんだなと思った。年・女子)
 館内には世界中の人々の生活が垣間見えるようなものばかり置いてあり、私たちの普段の生活ではあまり見られないレアなものもあり面白かったです。とくに良かったのはアメリカの歴史で、オシャレでレトロな雰囲気もあり「この時代のアメリカに行ってみたかったな・・・」と思いました。楽しいなと思ったことも多くありましたが、それ以上に考えさせられたこともありました。昔から続いていた外国間での関係が見えて考えさせられることも多くありました。年・女子)
 私は外国の文化にとても興味があるので民族学博物館に行くことができとても良かったと思います。住んでいる環境に合わせた道具がたくさんあり文化と環境の結びつきも強く感じたけど、宗教と文化の結びつきも強く感じました。もちろん日本のものもたくさんあったけど、「何、これ!?」と思う、初めて見るものもたくさんありました。国や地域が違うと文化、さらには考え方も違うのは当然だと思います。私はその違いを知ることは面白いと思います。相手の文化も、そして自分の文化も大切にしなければならないと思いました。今回の見学で、自分が大学で学びたいと思うことがより明確になりました。年・女子)


「大阪大学吹田キャンパス」 (午前中/科学の教室/32名参加)

 吹田キャンパスには工学部、医学部、薬学部、歯学部と、産業科学研究所、微生物病研究所、蛋白質研究所、接合科学研究所、レーザー科学研究所などの研究所、そして超高圧電子顕微鏡センター、核物理研究センター、サーバーメディアセンターなどの施設があります。緑の木々が多く静かで広大なキャンパスで、生徒達はいちょう祭のパンフレットを見ながら関心のある研究室を順に訪れて見学していました。

 
 阪大本部前のバス停で集合写真。向こうの建物は大阪大学の本部。すぐ近くには大学病院がそびえています。    吹田キャンパスは起伏のある丘陵地。街路樹が植えられている広い道や池や林などもあり気持ちよく散策できました。
     
 
 薬学部の実験コーナー。クロマトグラフィーを使って植物の薬の成分を抽出する実験をしている峰高生。    世界最高である300万Vの加速電圧で加速した電子線を、小さな試料に当てて観察する超高圧電子顕微鏡です。
     
  <参加者の感想>
  吹田キャンパスではレーザーや量子学など理系の物理分野の施設を中心に回りました。そこで受けた説明は難解な部分が多くありましたが、自分が意識していない小さなことでも、様々な実験や計算で試行錯誤することによって生まれたという事を知れました。例を挙げるとレーザーの光は波長を変えると色が変わる事や、光が何度も同じ場所を反射することによって光の線として見れるなどです。このように物理は自分たちの身の回りにあり活用されている身近な学問であることを知れました。1年・男子)
  レーザー科学研究所が一番印象に残った。具体的に何を目標としているか分からないまま見学に行ったが、そのスケールの大きさに驚かされることとなった。そこには全長50mはあろうかというようなレーザー照射装置があり、レーザーによって核融合を起こせるだけのエネルギーを供給する研究が行われていた。最終的には核融合炉に用いることのできるレーザーを目指しているそうだ。この研究所を訪ねるまではレーザーの使い道はレーザーカッターとレーザーポインターくらいだと思っていた。その考えを完全にひっくり返されレーザーに大きな興味を持った。1年・男子)
  レーザーの体験では牛の歯を使って実際にレーザーを打って穴を開けました。光が全く見えず音も小さかったので驚きました。見えないけど実はとても高温で危険らしいです。がん細胞を見つける体験では開腹しなくてもいい治療法を教わることができました。薬品を投与し光ファイバーで直接がん細胞を焼く方法です。また特殊な光でがん細胞を発見しやすくする体験もしました。実際に光を当てた時、がん細胞だけは違う色をしていました。1年・女子)
  吹田キャンパスでは超高圧電子顕微鏡を見ました。これは世界最高加速電圧の顕微鏡でトータルすると学校の校舎の2階くらいよりも高く、顕微鏡とは思えないくらいの大きさでした。その顕微鏡は自分で使うことはできませんでしたが、吹田キャンパスの別の顕微鏡では自分で操作して金の原子の集団が斑点模様に並んでいるところを見ることができました。その斑点にはたくさんの波のような模様が浮き出ていて、その仕組みは難しくて私には理解できませんでしたが、新しい発見ができて楽しかったです。年・女子)
  クラゲやホタルなどが持つ蛍光タンパク質や化学発光タンパク質についての研究を見学した。タンパク質を使っての5色のNano-Lanternの発光はとても不思議で魅力的だった。蛍光タンパク質、化学発光タンパク質を使ってがんを見つける研究もされていて未来の医療に貢献していることが分かった。1年・女子)
  サイバーセキュリティとプライバシー保護についての研究室を見学した。暗号鍵の話では楕円曲線暗号が最近注目されていること、またビットコインのセキュリティ技術であるブロックチェーンとこれを支えるPOW(proof of work)と仕事の証明等の話を聞いた。何となく概念的にどんなものか学ぶ事は出来たが、どのようにしてそれが作られるのかなどの数式はまだ自分の知識では理解が及ばず、もっと勉強に真剣に取り組んでいこうと思った。年・男子)
  以前から興味があった歯学部と薬学部に行きました。歯学部では患者さんを治療するための椅子(最初に作られた)など、戦後間もない頃の歴史から現代の技術までの事が細かに学べました。薬学部ではルミノール反応を利用して、もともとその場所に血があって拭き取られたかどうかを調べる実験をしました。血があった場所はルミノール反応を起こし、暗くすると黄色く光って確かめることができました。年・女子)


「大阪大学豊中キャンパス」 (午後/55名参加)

 豊中キャンパスには理学部と基礎工学部、文学部、法学部、経済学部などの文系学部、付属図書館、総合学術博物館、サイバーメディアセンターなどがあります。また全学教育講義棟では1、2回生の授業が行われサークル活動も盛んです。いちょう祭のメイン会場で、模擬店やサークルの発表が多数行われ多くの人で賑わっていました。生徒達は研究室や図書館などの施設を見学したり、サークルの発表やスピーチコンテストなどを自由に見学しました。

 
 正門から入ると右側に理学部と基礎工学部が並び、さらに進むと文系学部や全学教育講義棟が並んでいます。    理学部宇宙地球科学科。小惑星探査機はやぶさ2のカメラの開発に関わっている学生さんの説明を聞く峰高生。
 理学部生物学科の実験コーナー。ビーズを使って細菌に感染するファージのアクセサリーを作っている峰高生。  理学部物理学科の素粒子の研究室。右の黒い装置は宇宙線(素粒子)を検出する手作りの実験装置です。
 磁石を近づけると抵抗値が変化する材料物質を使った実験。ハードディスクの読み取り部分に使われています。  全学教育講義棟付近では模擬店が並び、サークルの発表も行われ学祭らしく多くの人で賑わっていました。
  <参加者の感想>
  理学部で室温の氷と惑星の話を聞き、文芸部の人から短編集をもらいました。また模擬店やダンス、軽音のバンドなどたくさんの楽しいことがありました。理学部では温度や圧力を変えることでできる氷は16種類に分けられると聞いて驚きました。私たちが普段見ている氷は「Tの氷」で本当に一部でしかないと感じた。また火星の小惑星には氷に覆われた表面の内側に海があるかもしれないという仮説には驚いた。何でそんな風に考えれるのかと思った。1年・女子)
  言葉はよく聞くけどあまり知らなかったスーパーコンピューターの実物を見た。一つ一つが大きいし、それを冷やすために何億円もする大きな冷却器やエアコンなどがあって管理も大変だなと思った。利便性を求めるだけでなく電力を減らすなどの工夫もしっかり考えてあってすごいと思った1年・男子)
  VRARを体験しました。まずVRを体験してみると、仮想で作られた世界なのにとても立体感や奥行きを感じたり、自分自身の身体の動きで操作ができたり、これまでやってきたゲームとは違った面白さを体感できました。次にARを体験すると周りの風景の中でゲームをしていて、VRより現実に近い状態で臨場感を味わうことができました。とくにARはあまりクオリティが高くなさそうと思っていましたが、実際はしっかり現実と合って見えて、技術が進んでいることを実感できました。またこの体験を通してVRARの技術がどのように作られているかに興味を持つことができました。1年・男子)
  サイバーメディアセンターに聞いた論理問題についての話に一番興味が持てた。発展的な頭の体操みたいな感じで、自分で解くには分からなかったけど、大学生の話を聞くと理解できたので、論理的思考の重要性と共に説明力の大事さについても学ぶ事ができた。年・男子)
  文学部を見学しに行き考古学について大学生が話してくれたことが印象に残っています。埴輪や瓦が作られた時代がその模様や形によって分かると知りとても驚きました。日々努力して研究している大学生の姿を見ることができとても勉強になりました。1年・女子)
  図書館でやっていた考古学の展示が一番印象深いです。学生さんによる説明に自分の知識をぶつけながら発展的に話が続いて行ったことで得るものが多かったです。その中で「何も無いことを無いままにするのではなく、何も無いことを重要と見れる価値観って他のどんな分野であっても大切なものなんだよ」と考古学専攻の方がおっしゃっていました。これからの人生において面白いお話が聞けたと思います。年・男子)